『アッラーの神』の思し召しのお話。
記念すべき日だというのに、前触れもなく襲来した季節外れの寒波によって、慌ててジャケットの下にセーターを着込む選手の姿も見られた。
1859年10月4日、ロードアイランド州ニューポートの完成間もない9ホールに集まった第1回全米オープンの出場選手は、プロ10名、アマ1名、優勝賞金150ドル、5位の賞金はたったの10ドルに過ぎなかった。
それから70年余り経過した1966年になると、参加選手が2597人にふくれあがったため、全米6ヵ所のコースで予選会が行われたほど、ゴルフはアメリカで急速に広まっていった。
予選会場の一つ、ロサンゼルスにある「リビエラCC」の受付では、1966年のその朝、ちょっとしたパニックが発生した。
過去にも黒人選手の参加は数例見られたが、いま忽然と出現した美丈夫は未知なる人種、足の長さも尋常でない。
「恐縮だが、もう一度お名前を」
役員は、アラブ系の大男を見上げながら訊ねた。
褐色の肌に漆黒の髭をたくわえた微笑の男は、訛りの強い英語で丁寧に名乗った。
「ムハンマド・イブン・へジャズ・アブドゥル・ファナイザ。
これが私の本名です。 長くて面倒なら頭の部分でも尻っぽの部分でも、好きな場所から好きな名前を選んでください」
この続きは、また来週に・・・
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